私たちが知ることのない「VISA」と、ある1人の男性の人生

2006年08月30日

パートナーのリチャードは、現在、(一回目の申請で却下された人の為の)再審請求で更に却下された案件の最終審議の審査官をしています。その中でも、RRT(難民再審議)に行く人達は、本当にタフなのだそうです。信じられない方もいらっしゃると思いますが、RRTに行く人の中には、自国から何十日もボートに乗って命からがらオーストラリアに亡命してきたという人もいるのです。彼らのほとんどは、自国に逆戻りをするという選択肢は無いそうです。最初の審査で却下されてしまったら、そのまま「Detention Center(難民収容所)」に送り込まれることになります。彼らは、そこで、RRTに行くための申請をするのです。リチャードは、その収容所にいる人達の弁護も何度もしています。

実際には、皆さんは、「難民」と聞いて、どのような人達をイメージされますか?リチャードが裁判で勝訴し、難民としてこの国に滞在するビザを取得した人の中には、時代のせいで難民にならざるを得なかった人達が何人もいます。今回は、その様な人達の中から、ある1人の難民だった男性の話を紹介したいと思います。(私も含めてですが)何不自由の無い生活をしてきた日本人として、日本であれオーストラリアであれ、「平和に生活をすることができる」という意義をもう一度思い返していただけたらと思います。

現在、オーストラリアで医師として働いているArrma(アーマ)さんという男性(現在39歳)がいます。彼は、イラクで外科医をしていました。そんな彼は、フセイン政権全盛期の頃、「反フセイン活動」に参加し、フセイン政権の「殺害リスト」に載ることになってしまいました。イラクから脱出しなければ、殺される以外にありません。彼は、イラクからクェートに逃走し、そこからボートに乗りインドネシアへ渡り、そしてオーストラリアへ難民として亡命してきました。自国で、外科医として活躍されていたArrmaさんは、一転他国の「難民」になってしまったのです。やっとの思いでたどり着いた、「夢の国オーストラリア」での生活は、難民収容所でした。その後、彼は3年間の収容所生活を強いられることになりました。皆さんは、その3年間がどんなに辛い生活であったか想像がつかれるでしょうか?その間、Arrmaさんは度々メディアに顔を出すことになり、その事に対しての、移民省からの反発を受けることになります。そして、彼は、最後の砦としてリチャードと出会い、裁判を起こすことを決意しました。最終的には、もう一度、RRTに戻って再審議を行うということになり、ビザの許可が降り、晴れて収容所から出ることが許されました。その時に彼が勝ち取ったのは、「Subclass786 Temporary(Humanitarian Concern)」というビザです。そんなビザあるんだ、、、という方がほとんどだと思いますが、実際には、この国には、100種類以上のビザが存在します。

やっと自由の身になれた彼は、3年間の収容所生活で病んでしまった自分の精神を癒すために、自転車でオーストラリア中を走り回りました。実は、私とリチャードもSydneyからWollongongまで、一緒に自転車で走ったのです(あの時は半分死にました、、、実は、ドキュメンタリーフィルムを撮っていたのですが、カメラマンやクルーの人達は車でした)。あれから、4年が経ちますが、彼は、オーストラリアでの医師の免許も取得し、現在WOGA WOGAという所で、医師として活躍しています。

そんなArrmaさんとは、知り合ってから今まで、一度もイラクについて話したことはありません。フセイン政権が崩壊された頃に会った時も、その話をしようとはしてくれませんでした。ただ、一度だけイラクについては、「二度と戻りたくない国」だと言っていたことがあります。そして、時々家族の話をしてくれます。亡命以来一度も会っていない家族のことを話す時の彼の気持ちはいったいどんなだろう、、この先いつ会えるのか分からない家族、、。私には、想像がつきません。30代前半に、オーストラリアに亡命し、35歳でやっと自由を得て、第二の人生を構築しつつあるArrmaさん。自分が信じた道を最後まで諦めない、彼の生き方を、皆さんはどう思われますか?

<あとがき>
私が、Arrmaさんの話をリチャードから聞いたとき、初めは信じること出来ませんでした。。私にとっては、聞いた話すべてが、テレビのニュースの中の出来事であり、まったく真実味を感じることができなかったからです。実際にArrmaさんに会った時も、彼がそのような重い過去を背負っている人には見えませんでした。実際には、私自身がその事実を想像するということすらできませんでした。

しかし、その後、リチャードのクライアントになった(何人もの)難民だった人達と会っているうちに、何か、一つの共通するものを感じるようになりました。すべての人が、過去の出来事にあえて触れないようにしているということです。晴れて、この国で自由の切符を手に入れた彼らが、本当に、心からこの国の生活をエンジョイしているのでしょうか。現実に体験してきた記憶は、そう簡単に抹消することは出来ないのではないのではないかと、私は思います。彼らは、あえて思い出さないようにしている、、あえて語らないようにしているように思えてなりません。

私自身、もし自分が日本を捨てて、この国に逃げ込まなくてはならない状況になってしまったら、、、と想像するだけで、胸が痛みます。私にとって、難民を体験された人達との出会いは、現代の日本で日本人としていられることに、心から感謝するきっかけになり、しかし、それによって自分自身の軟弱さや無知さを思い知るきっかけにもなりました。

ビザに関するお問い合わせはこちらまで:

たかがVISAされどVISA

2006年07月24日

はじめまして、VISA SERVICESのIkuko Killalea(いくこ キラリー)です。そして、隣にいるのは、パートナーのRichard Killalea(リチャード キラリー)です。私達は、このオーストラリアという国に、何らかの形で滞在したいという方々のVISA取得のお手伝いをする仕事をしています。

この国に滞在する為には、基本的には2通りの方法があります。一つは、「この国のCITIZEN(国民)であること(になること)」、そして、もう一つは、「この国に滞在する為の目的に合ったVISAを取得していること」です。

その違いを、分かりやすく例を挙げて説明します。私のパートナーのRichardは、オーストラリアで生まれ育った「CITIZEN」です。オーストラリアで生活をするために、VISAを取得する必要はありません。反対に、日本に滞在したいと決意してしまったら、日本に滞在する為の目的に合ったVISAを取得しなければ、日本に滞在することはできません。私は、二重国籍を許していない日本の国籍を有している、れっきとした日本人です。なので、日本で生活するためのVISAを取得する必要はありません。しかし、日本人でありながら、オーストラリアで生活しようと決意してしまったため、VISAを取得する必要性が生じることになってしまいました。現時点では、日本国籍を失いたくはありませんので、「CITIZEN」ではなくVISAを保持することで、この国に滞在しています。

現在は、VISA取得を希望される方々のお手伝いをしている私ですが、そんな私も、同じように、申請書を作成し、健康診断も受け、提出資料も準備し、認定コピーのサイン(それ自体は無料)を貰うために、大変な思いをしてJP(Justice of Peaceと言って、ボランティアで、コピーの認定サインをしてくれる人達)を探し(お願いするコピーの数がかなり多くて、申し訳なく思ってしまった私は、お願いしたJPの人が営んでいたお店で、$50の傘を買ってしまい、後からつくづく日本人だなと思ってしまったのを覚えています)、ドキドキしながら移民局に申請をした経験があります。そして、晴れてVISAを取得したからこそ、この国に滞在することが許されているのです。

このオーストラリアで、何気なく、道を歩いていて、すれ違った「日本語で話している若い女性二人」も、学生VISAでしょうか?、ワーキングホリデーVISAでしょうか?それともツーリストVISAでしょうか?いずれにしても必ず何らかのVISAを取得しているはずです。日本人レストランで、「隣の席で楽しそうに食事をしている日本人の家族」、ビジネスVISAでしょうか?永住VISAでしょうか?やはり何らかのVISAを取得しているからこそ、そのレストランで食事をすることができるのです。

今現在、オーストラリアに滞在されている方は、どの様なVISAをお持ちですか?それぞれのVISA一つ一つに、取得した人にとっての、「申請準備、申請、取得」までの手間と思いが込められているのではないでしょうか(ツーリストVISAはないかもしれませんが、、、)。そして、VISAとは、大手を振ってオーストラリアに滞在することのできる「切符」の様なものではないかと、私は思っています。もう一度、そのVISAを取得されたときのことを思い出してみてください。どんなVISAであれ、取得されたときは、とてもハッピーな思いをされたのではないでしょうか(再度、ツーリストVISAは無いかもしれませんが、、、)?

そして、現在、日本で生活されていて、オーストラリアでの生活を夢見ていらっしゃる方々。きっとどんな方にも、可能性はあります。あきらめずに、希望を持ってチャレンジしてください。まずは、どんな目的を持ってオーストラリアに滞在をしたいかを決定してみてください。それさえ決まれば、あとは、(気楽に)専門家に相談してみましょう。必ず道は開けます。

お問い合わせはこちらまで:

カテゴリー

このブログのフィードを取得
[フィードとは]